「顎の下が腫れている」「長引く下痢」や「元気がない」といった日常の小さな不調の裏に、実は犬や猫に多い「リンパ腫」が隠れているケースは少なくありません。
初期症状が分かりにくく見逃されやすい病気だからこそ、飼い主様による早期発見と、専門的な診断に基づいた適切な治療選択が極めて重要です。
本記事では、「犬猫がんセンター」を併設するパル動物クリニックの院長が、リンパ腫の症状や診断、後悔しないための治療の考え方を詳しく解説します。

飼い主様が最初に気づく「初期症状」|タイプ別・リンパ腫のサイン
リンパ腫は、全身を巡るリンパ組織に発生する悪性腫瘍(血液のがんの一つ)です。発生する場所によって症状が大きく異なるため、まずは愛犬・愛猫の「いつもの様子」と照らし合わせてチェックすることが早期発見の第一歩となります。
多中心型リンパ腫
主に犬に最も多く見られるタイプで、全身のリンパ節が腫れるのが特徴です。
よくある症状として以下が挙げられます。
・体表のしこり:首の付け根、顎の下、膝の裏などにコリコリした腫れがある
・無痛性の腫れ:しこりを触っても痛がらず、最初は元気や食欲もある
・全身の衰弱:病状が進行すると、急激に元気や食欲がなくなる
「痛がっていないから大丈夫」と様子を見てしまうケースが多いですが、リンパ節の腫れは体の中の重大な異変を知らせるサインです。
消化器型リンパ腫
特に猫に多く見られるタイプで、胃や腸のリンパ組織に発生します。単なる「お腹の調子が悪いだけ」と見過ごされやすいため注意が必要です。
よくある症状として以下が挙げられます。
・慢性的な下痢:下痢止めや食事療法を試しても改善しない
・繰り返す嘔吐:頻繁に吐く、または食べた直後に吐き出す
・食欲の低下:食べる量が徐々に減る、好物を食べなくなる
・体重の減少:見た目に痩せてきた、抱いた時に軽く感じる
食事を変えても改善しない消化器症状は、腫瘍によって腸の壁が厚くなっているサインかもしれません。
その他のタイプ
他にも発生部位により、以下のような特殊な症状が現れることもあります。
◆縦隔型(胸の中)リンパ腫
呼吸が苦しそう、咳が出る、胸に水がたまることもある
◆皮膚型リンパ腫
皮膚の赤み・しこり、なかなか治らない痒みや脱毛
◆鼻腔リンパ腫
猫において鼻の上が腫れてくる、鼻血が出る
これら以外にも腎臓や肝臓、脾臓、神経など様々な部位でリンパ腫が認められます。
また、ここで挙げた症状はリンパ腫特有のものではなく、他の病気でも見られます。
しかし「薬を飲んでも治らない」「なんとなく様子がおかしい」という飼い主様の気づきと行動が、愛犬・愛猫を守ることにつながることも多くあります。
少しでも不安を感じたら、早めに専門医へご相談ください。
リンパ腫になりやすい犬種と猫の傾向
リンパ腫は、犬種・猫種や年齢を問わず、どんな子にも起こり得る病気です。「ミックスだから」「まだ若いから」といって全く発症のリスクがないとも限りません。
しかし統計的に発症リスクが高いとされる特定の種類や特徴が存在することも事実です。
猫の場合は、過去に猫白血病ウイルス(FeLV)に感染した経験がある場合にリスクが高まる傾向があります。
犬の中でも、以下の大型犬種は比較的リスクが高いとされています。
・ゴールデン・レトリバー
・ラブラドール・レトリバー
・ジャーマン・シェパード
・バーニーズ・マウンテン・ドッグ
「特定の犬種だから」と過度に恐れるのではなく、変化にいち早く気づけるように日頃から丁寧なスキンシップや定期健診を行い、正しく予防と早期発見に努めましょう。
実際の検査と診断の流れ|難しい検査ばかりではない
「リンパ腫の検査」と聞くと、体に大きな負担がかかる大がかりなものを想像されるかもしれません。
しかし実際には、診断は「段階的」に行われ、まずは負担が少ない検査から進めていくのが一般的です。発生している場所に合わせて、主に以下のような検査を選択します。
◆体表のしこりが気になる場合:針生検(細胞診)
首や膝の裏などのリンパ節が腫れている場合、最初に行うのが「針生検」です。
腫れている部分に細い針を刺し、細胞を採取して顕微鏡で観察します。
この検査は数分ほどで終わり、麻酔を必要としないケースがほとんどです。
痛みも通常の注射と同程度であるため、検査中にじっとしていてくれる子がほとんどで、ペットの体への負担を最小限に抑えられます。
短時間で「腫瘍の疑い」を迅速に判断できる非常に効率的な方法ですので、まずはこの検査で現状を把握することから始めます。
細胞診で判断が難しい場合は、麻酔下で組織の一部を採取する「組織生検」を検討することもありますが、まずはこの負担の少ない検査からスタートします。
◆お腹の中など体内の異変が疑われる場合:超音波(エコー)検査
消化器型リンパ腫など、外側から見えない場所を調べるには「超音波検査」が非常に有効です。腸の壁の厚さや構造、内臓リンパ節の腫れ、腹水の有無などが分かります。
超音波検査の最大のメリットは、お腹に専用の機械を当てるだけという非常に低侵襲な手法にあります。痛みは一切なく、基本的に麻酔をかける必要もありません。
リアルタイムで臓器の状態を詳細に確認できるため、大切なペットを怖がらせたり、過度なストレスを与えたりすることなく、スムーズに診断を進められるのが特徴です。
当院の先進的な取り組み|負担の少ない「がんスクリーニング検査」
パル動物クリニックでは、より早期にリンパ腫のリスクを評価するため、富士フイルム(コマーシャルラボ)による最新の「血液によるがんスクリーニング検査」を導入しています。
この検査体制は、近隣の動物病院でも導入例が少ない先進的な試みです。
この特徴は大きく3つあります。
1.採血のみで判定可能:通常の血液検査と同じ手順で、愛犬・愛猫への負担は最小限です。
2.早期発見の精度向上:従来の画像検査では見つけにくい「症状が出る前の段階」でも、がんのリスクを察知できる可能性があります。
3.高い費用対効果:従来の遺伝子検査等と比較して、飼い主様が検討しやすい価格設定となっています。
このスクリーニング検査は健康診断の採血一度でまとめて検査が可能です。定期検診のオプションとして追加いただくことで、“もしも陽性なら早期診断、治療へ、陰性なら安心材料として”より精度の高い健康管理に役立てられます。
そして、この検査や診療体制を支える最大の強みは、当院に「犬猫がんセンター」が併設されていることです。 一般的な動物病院では難しい高度な腫瘍治療にも対応しており、ワンストップで専門的な精密検査や治療へ移行できます。
犬や猫のリンパ腫は「治る病気?」|治療に対する考え方
リンパ腫と診断された際、多くの方が「治るのでしょうか?」と尋ねられます。
正直にお伝えすると、リンパ腫は現代の獣医療では「完治(完全に消し去る)」が難しい病気です。しかし、リンパ腫の種類にもよりますが、早期発見でき、抗がん剤治療への反応が良い場合は完治する子もいます。
治療の目的は「完治」ではありますが、私たちは、検査ではリンパ腫の細胞が認められず、症状が落ち着いて元通りの生活を送れる状態=「寛解(かんかい)」を初めの目標にしています。
寛解とは、腫瘍が縮小・消失し、以前のように食事や散歩を楽しめる状態のことです。
当院の治療の方針
当院のリンパ腫治療は、完治することを目標に実施しますが、上手に付き合っていく「共存」の姿勢も大切にしています。
リンパ腫は他のがんと比較しても抗がん剤への反応が良いという特徴があり、適切な治療によって劇的に体調が改善するケースも珍しくありません。
実際の治療では、リンパ腫の種類により、様々な抗がん剤の使用方法が提案されています。初めはエビデンス(根拠)に基づいて治療を提案させていただき、実施していきます。
しかし治療が全ての子に合うわけでなく、副作用や効果の程度は様々です。当院では愛犬・愛猫の年齢やご家族の生活環境に合わせて最適な治療計画を組み立て、場合により当初の計画を変更するなどより柔軟な対応を心がけています。
また治療の際には副作用対策や痛みのコントロールを徹底し「苦しいだけの治療」にさせないように実施していきます。
私たちが最も大切にしているのは、愛犬・愛猫のQOL(生活の質)を維持し、笑顔で過ごせる時間を最大化することです。
がん治療に特化した当院が、ご家族の不安に寄り添いながら、その子にとっての最善の道を一緒に考えてまいります。
まとめ|院長からのメッセージ
私は大学の腫瘍科に勤務していた経験から、早期発見・早期治療、そして何よりQOL(生活の質)を維持することの大切さを痛感してきました。
「なんとなく元気がない」「顎の下が腫れている」「下痢が続く」といった飼い主様の小さな違和感は、愛犬・愛猫を救う重要な手がかりです。
「もし病気だったら…」と受診をためらうお気持ちも分かりますが、一人で抱え込まずに「まずは今の状況をちょっと相談してみよう」と、気兼ねなく受診いただければと思います。正しい状況を知ることが安心につながります。
がん治療・腫瘍に特化した当院が、飼い主様の不安に寄り添い、愛犬・愛猫との大切な時間を守るために全力でサポートいたします。
~小さなお困りごとから専門的な治療まで、安心してご相談ください~
🐾碧南市の『パル動物クリニック』
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