犬や猫の「できもの」放置は危険?肥満細胞腫の見分け方と、後悔しないための早期検査

ブラッシングや撫でているときに、ふと気付く皮膚の「しこり」や「できもの」。
「これは何だろう」「悪いものだったらどうしよう」と心配になったことはありませんか?

皮膚にできる腫瘍にはさまざまな種類がありますが、その中でも肥満細胞腫は見た目だけでは判断しにくい腫瘍のひとつです。

この記事では、「犬猫がんセンター」を併設するパル動物クリニックの院長が、肥満細胞腫の特徴や症状、検査や当院の手術の進め方などをわかりやすく解説します。

 

肥満細胞腫とは|”取ってみないとわからない”が起こりやすい腫瘍

肥満細胞腫は、皮膚にできる腫瘍のひとつで、犬にも猫にも発生します。
「肥満」という名前がついていますが、いわゆる体重の肥満とは関係ありません。体内の免疫反応に関わる「肥満細胞」という細胞が腫瘍化したものです。

この腫瘍の厄介なところは、見た目や感触だけでは良性か悪性かを判断しづらく、切除後の病理検査ではじめて「どんなタイプの腫瘍か」が判明します。

また、短期間で大きさや見た目が変化することがあり、これは他の腫瘍ではあまり見られない特徴です。
これはしこりを触ったりして肥満細胞腫を刺激をすると、腫瘍細胞内に含まれるヒスタミンなどの炎症性物質が放出され、周囲に炎症反応を起こすためです。

たとえば
「ある日は腫れて赤くなっている」
「数日後には少し小さくなっている」
「触ると周囲がむくんでいるように感じる」

といった変化が見られることがあります。

なお、犬・猫どちらでも発症する可能性がありますが、手術の方針には大きな違いが見られます。
発症のしやすさには一定の傾向があるものの、どのような年齢や犬種・猫種であっても、発症する可能性があることは覚えておきましょう。

発症しやすい傾向
中高齢(おおむね8〜9歳以降)で多い中高齢(おおむね9〜11歳以降)で多い
しかし全年齢でも起こり得る
ボクサー
パグ
フレンチ・ブルドッグ
ボストン・テリア
ゴールデン・レトリーバー
ラブラドール・レトリーバー
シャム(サイアミーズ)/シャム系ミックス
バーミーズ
メインクーン
ラグドール
ロシアンブルー

 

症状と見つけ方|早めに気付きたい”しこり”とサイン

肥満細胞腫は、体のさまざまな場所にできます。愛犬・愛猫の負担を少なくするためにも、早めに気付いて動物病院へご相談いただくことが大切です。

肥満細胞腫は、飼い主様が次のようなきっかけで気付くことが多いです。

皮膚に触れたときにしこりを感じる
ブラッシングや撫でているときに、普段と違う硬さやふくらみに気付きます。

できものが急に大きくなったり、小さくなったりする
肥満細胞腫は日によって大きさが変わることがあります。「昨日より腫れている?」と感じたら要注意です。

愛犬・愛猫が気にして舐める
腫瘍が刺激を受けて炎症を起こすと、かゆみや違和感が生じて、頻繁に舐めたり噛んだりすることがあります。

さらに、以下のような変化が見られたら、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
急に大きくなった
出血しやすい、またはすでに出血している
腫れたり引いたりといった変化が続く
できものの周りが赤く腫れている
執拗に気にしている素振りを見せる

イボや虫刺されのように見えることもあり、「そのうち治るかも」と様子を見る方も多いですが、肥満細胞腫の場合は早めに確認し、適切に対応することが重要です。

検査の流れ|FNA(細胞診)と生検

皮膚にしこりが見つかった場合、最初に行う検査がFNA(穿刺吸引細胞診)です。これは、細い針を腫瘍に刺して細胞を吸引し、顕微鏡で観察する検査です。

FNAのメリットは以下の通りです。
・痛みが少ない
・麻酔が不要で、外来で短時間に実施できる
・「肥満細胞腫らしい」かどうかをある程度判断できる

ただしFNAだけでは、確定診断や悪性度まで判断できないことがあります。

そこで必要に応じて、生検(腫瘍の一部を切り取って調べる病理検査)を行い、治療方針を定めていきます。

生検では以下のことを調べ、治療の方針を固めていきます。
・腫瘍の正確な種類
・悪性度(グレード)
・手術でどこまで取る必要があるか
・追加治療(放射線治療や抗がん剤など)の必要性

特に犬の場合、グレード分類(悪性度の指標)によって手術の範囲や追加治療の必要性が変わるため、この検査の段階で情報を揃えることが大切です。

手術と治療の考え方|マージンの重要性

犬の肥満細胞腫の手術では、腫瘍の周りを広めに切る拡大切除、つまり「マージン」を設けて切除することが基本方針となります。

肥満細胞腫は見た目の境界より外側にも腫瘍細胞が広がっていることがあり、目に見える部分だけを切除すると取り残しが起きて再発につながる可能性があります。そこで、周囲の正常な組織も含めて、ゆとり(マージン)をもって切除します。

たとえば、直径1cmの肥満細胞腫がある場合を考えてみましょう。
腫瘍の周囲に2cmのマージンを確保し、さらに皮膚を無理なく閉じるための余裕も加えると、手術の傷は結果として約5cmになることがあります。

マージンを確保しにくい場所
指先や足先など、マージンを確保しにくい場所では、手術が難しくなることがあります。たとえば、口周りは切除したい範囲に対してスペースが限られ、脇や内股は皮膚も薄く動きが多いため術後管理が難しくなりがちです。また指先では十分なマージンを取るために、断指や断脚(指や脚を切断する)が選択肢になる場合もあります。

かわいそうに思われるかもしれませんが、不十分な切除で再発を繰り返すよりも、確実に腫瘍を取り除くことが、愛犬の長期的な健康のためには重要な場合があります。

猫の場合は術後管理と再発防止が大切
猫の肥満細胞腫は、適切に切除できれば治癒が見込めることが多い一方、脾臓や消化管など内臓にできるタイプでは進行しやすく、手術が難しくなることがあります。

また、猫では多発や再発も珍しくありません。術後は、新しいしこりがないか/手術部位に再発がないかをご家庭で触って確認し、定期的な診察(触診)で経過を見守ります。
異変にいち早く気付ければ、早期に対応することができます。

パル動物クリニックの特徴

当院には「犬・猫がんセンター」があり、がん・腫瘍の診療に力を入れており、大学の動物病院 腫瘍科で助教経験のある院長と、獣医腫瘍科認定医Ⅱ種の獣医師が担当をいたします。

小規模病院のため院内設備や対応できる手術に限りがある場合もありますが、だからこそ特に重要である「最初の評価」を丁寧かつ高い精度で行うことを重視しています。
放射線治療など、より高度な設備が望ましい場合は、信頼できる二次診療施設へ速やかにご紹介し、紹介先とも情報を密に共有します。
地域のかかりつけ医として通いやすさを大切にしながら、質の高い治療までを一貫して行い、最後まで伴走します。

愛犬・愛猫を身近で見ている飼い主様の気付きは何より大切です。しこりや腫瘍が「もしかして…」と気になった時点で、ぜひ気軽にご相談ください。

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まとめ|不安を抱えたまま一人で判断せず、早めにご相談ください

肥満細胞腫は、日によって見た目が変わることもあり、犬と猫で経過や治療方針が異なる腫瘍です。

「うちの子のしこりは大丈夫?」「手術が必要?」「費用はどれくらい?」――ひとりで抱え込むのはつらいものです。
パル動物クリニックでは、飼い主様の不安に寄り添い、適切な治療をご提案します。早めにご相談いただくほど、検査や治療の選択肢も広がります。
皮膚のしこりが気になったら、ぜひ当院までご相談ください。

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参考文献
・Blackwood L, et al. (2012). European consensus document on mast cell tumours in dogs and cats. Vet Comp Oncol, 10(3):e1-e29.
・LaDue T, et al. (1998). Radiation therapy for incompletely resected canine mast cell tumors. Vet Radiol Ultrasound, 39(1):57-62.

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