愛犬・愛猫の乳腺腫瘍を見逃さないために|しこりの正体を検査で判定し、納得の治療を選ぶ

乳腺腫瘍は、犬や猫の乳腺(胸からお腹にかけて左右に並ぶ乳腺組織)にできる腫瘍の総称です。腫瘍が悪性の場合は、乳腺がん(乳がん)と呼びます。 

腫瘍と聞くと「早く手術で取るべき?」と考える飼い主様は多いと思います。
一方で「5mm程度だから様子見で良い」と言われ、不安を抱えながら経過観察になってしまうケースもあります。
大切なのは、どちらかに決めつけず、まず検査でしこりの正体を確かめたうえで、手術の必要性や範囲を判断することです。

そこでこの記事では、「犬猫がんセンター」を併設するパル動物クリニックの院長が、乳腺腫瘍の基本的な知識と注意すべき病態や手術について詳しく解説します。
「乳腺腫瘍」のセカンドオピニオンを検討されている方も、ぜひお読みください。 

 

犬と猫の乳腺腫瘍とは|「乳腺の近く=乳腺腫瘍」とは限らない

犬の乳腺は、お腹から胸にかけて左右に5つずつの計10個、猫の乳腺は、左右に4つずつの計8個が並んでいます。この乳腺列に沿って腫瘍ができるのが乳腺腫瘍です。

ただし、乳腺の近くのしこりが必ずしも乳腺腫瘍とは限らず、皮膚・皮下の腫瘍や炎症、嚢胞など別の原因のこともあります。だからこそ、見た目や位置だけで判断せず、動物病院でしこりの正体を確認することが大切です。

以下のような変化があった場合は、動物病院にご相談ください。
✓しこりが急に大きくなった
✓しこりが硬い、または周囲の皮膚に癒着している
✓乳腺が赤く腫れている
✓触ると熱感がある、または痛がる
✓複数箇所にしこりがある
✓皮膚が潰瘍化している、または出血している

もし乳腺腫瘍だった場合、犬では約50%が悪性で、その悪性の約50%が転移するとされます。また、猫では85〜90%以上が悪性で、非常に転移しやすいことが知られています。

気づいた段階で早めに相談することで、治療の選択肢が広がり、体への負担を抑えながら良い経過を目指しやすくなります。

特に注意したいタイプ:炎症性乳腺癌

乳腺腫瘍の中には「炎症性乳腺癌」と呼ばれるまれですが非常に進行が速く、治療が難しいタイプもあります。
乳腺の広い範囲が赤く腫れて硬くなり、触ると熱感があったり強い痛みが出たりします。
皮膚の浮腫やただれ・潰瘍を伴うこともあり、痛みや発熱、元気・食欲の低下などで、犬や猫にとって負担の大きい状態になりやすいのが特徴です。
このような症状に気付いた場合は、できるだけ早めに動物病院へお越しください。

当院で行うFNA(穿刺吸引細胞診)

しこりを見つけたとき、最初に行うべき検査がFNA(穿刺吸引細胞診)です。細い針でしこりの細胞を採取し、顕微鏡で観察することで、しこりの性質を見極める手がかりになります。

FNAで分かるのは、乳腺腫瘍の可能性の評価や、炎症・嚢胞・ほかの腫瘍との鑑別、そして治療方針を考えるための情報(腫瘍細胞の有無、腫瘍タイプの手がかりなど)です。

一方でFNAだけでは、良性・悪性の確定や、悪性度や広がりの程度までを判断することはできません。そのため、最終的な確定診断は、手術で切除した組織を病理検査に提出して判断します。

また、レントゲンやエコー検査で肺転移の有無を確認するほか、悪性度が高い場合はCT検査を実施することもあります。

パル動物クリニックのこだわり

当院では、しこりを見つけた段階で、すぐに手術するか様子見をするかを決定せず、まずFNAで根拠をそろえることを大切にしています
この検査結果をもとに治療の選択肢とメリット・デメリットを分かりやすくご説明し、飼い主様が納得できる形で治療を進めます。

また当院の「犬猫がんセンター」では、大学病院腫瘍科や画像診断顧問の経験をもつ院長と、腫瘍科認定医(Ⅱ種)が連携して診療します。必要に応じて二次診療施設とも連携しながら、検査・画像評価・手術・病理検査、そしてその後の通院まで一貫してサポートします。
根拠に基づいて方針を検討し、腫瘍治療における専門性と医療の質を大切にしています。小さな不安も、安心してご相談ください。

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乳腺腫瘍の治療選択肢の全体像

乳腺腫瘍の治療は、外科的切除(手術で取り切る方法)が基本です。
これは、乳腺腫瘍に対する抗がん剤の効果が限定的であるためです。犬の乳腺腫瘍に対する化学療法の有効性は十分に確立されておらず、猫の乳腺腫瘍に対しても、抗がん剤単独での治療効果は低いとされています。

「とりあえず取る」を避けるべき理由|領域切除(拡大切除)で再発防止へ

乳腺腫瘍の手術で大切なのは「しこりが小さいから小さく切る」ことではなく、再発をできるだけ減らすという目的から手術内容を考えることです。

しこりだけを小さく切り取る「部分切除」は、目に見えない腫瘍細胞の取り残しや同じ乳腺列の見落としにつながりやすく、結果として再発・再手術のリスクが高まることがあります。

一方「領域切除(拡大切除)」は、しこり周辺の乳腺組織も含めて切除範囲を設計できるため、取り残しを減らし、再発リスクを下げやすいのが大きな利点です。リンパの流れも考慮することで、必要に応じて転移の可能性まで見据えた対応につなげられます。

たとえ腫瘍が5mmでも、同じ乳腺列に将来の病変につながりうる組織が残っていたり、切除の端が不十分だったりすると再発リスクは残ります。そのため当院では、転移の可能性も踏まえて、適切な安全域(マージン)を確保することを重視します。

もちろん「やみくもに大きく切る」わけではありません。術前に腫瘍の数と分布、リンパ節の状態、画像検査などで全身評価(転移の可能性の確認)を行い、得られた情報を総合して必要十分な切除範囲を見極めます。
そのうえで、最適な手術範囲と追加治療の必要性を判断しています。

予防と早期発見|若い時の避妊手術による予防効果と、見つけ方の工夫

乳腺腫瘍の最も効果的な予防法は、初回発情前の若い時期に避妊手術を受けることです。

犬では、以下のように避妊手術が早いほど予防効果が高いとされています。
・初回発情前に避妊手術を行うと、乳腺腫瘍の発生リスクが約0.5%まで減少
・初回発情後〜2回目の発情前に避妊手術を行うと、リスクは約8%にとどまる
・2回目の発情後だと、リスクは約26%まであがる

猫の場合も1歳までに避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生リスクが大幅に低下することが報告されています。

乳腺腫瘍の予防という観点では、避妊手術は可能な範囲で早い時期の実施が望ましいとされています。なお、適切な時期は犬種・猫種や体格、健康状態によって異なるため、かかりつけの動物病院でご相談ください。

自宅でのチェックのコツ

すでに成犬・成猫になっている場合や、避妊手術を行っていない場合は、定期的な自宅チェックが早期発見につながります。
月に1回程度、リラックスしているときに優しく確認する習慣をつけましょう。

チェックの方法は、お腹を撫でながら乳腺列に沿って触れ、小さなしこりがないか、左右で腫れ方に差がないかを見ていきます。
あわせて、乳腺の赤みや腫れ、皮膚の潰瘍・出血など、見た目の変化も確認しておくと安心です。
気になるしこりやイボ、ふくらみを見つけた場合は、大きさ・数・見た目も記録しましょう。

受診の前には、次の点も整理しておくと、獣医師が診断や治療方針を考える助けになります。
・いつから気づいたか
・大きくなる速度(急に大きくなった/ゆっくり大きくなっている など)
・痛みの有無(触ると嫌がる、痛がる など)
・ほかの変化(元気がない、食欲が落ちた など)

このような情報をメモや写真を残しておくと受診時に役立ちます。写真を撮る際は、定規やコインなどを一緒に写すと大きさが伝わりやすくなります。

まとめ

乳腺付近のしこりは、乳腺腫瘍とは限りません。まずはFNA(細針吸引細胞診)で性質を確認し、必要に応じて生検(組織を採集して調べる検査)も組み合わせながら、状況に合った治療を設計します。

また手術が必要な場合も、「とりあえず取る」のではなく、再発を減らすために切除範囲(マージン)や術式を根拠に沿って決めることが大切です。つまり、診断から手術、その後の見通しまでを考慮して一つひとつ丁寧に進める“医療の質”が結果に大きく関わります。

「早く取るべき?」「様子見で良い?」と迷ったときは、早めに動物病院で検査を受けて状況を把握することが大切です。
腫瘍の診療経験が豊富な当院では、検査結果をもとに、愛犬・愛猫にとって無理のない選択肢を一緒に考えていきます。
疑問や不安にも一つひとつ丁寧にお答えします。他院での方針に迷いがある場合は、セカンドオピニオンとしても当院をご活用ください。

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